通帳を全部並べた夜の話。FIREより先にやるべきことがあった。
43歳、8畳1Kの部屋に段ボールが積まれたまま、通帳を全部テーブルに並べた夜の話をする。
FIREを目指したいと思いながら、自分の家計の数字を一度も直視したことがなかった。
副業を始める前に「今自分がどこにいるか」を知る。 それがFIREへの最初の一歩だった。
お金のことを「考えてきた」と思っていた
会社員として10年以上、毎月給料をもらってきた。 年収は低くない。 ボーナスもある。
「ちゃんと働いてるから大丈夫」と思っていた。 漠然と、でも確信を持って。
でも実際には、自分の口座に何円あるか知らなかった。 毎月いくら使っているか、把握していなかった。
家計は妻に任せていた。 それで「考えてる」つもりだった。
自分の残高を確認しなかったのは、知識がなかったからじゃない。 確認したら「思ってたより少ない」と気づくのが怖かったから、見なかった。
それを、10年以上続けていた。
離婚後、息子と2人になった夜
離婚が決まって、息子と2人で8畳1Kの部屋に引っ越した。 息子は10歳。 俺は43歳。
引っ越しの段ボールがまだ積み上がった状態で、通帳を全部テーブルに並べた。 メインの給与口座、使ってない普通口座、財形貯蓄の通帳。
ネット銀行の画面も開いて、手書きのメモ帳に全部の残高を書き出した。
合計を出した瞬間、手が止まった。
ほぼゼロだった。 正確には、2ヶ月分の生活費にもならない金額。
怒りとか悲しみより先に、「こんなことも知らなかったのか」という静かな虚しさがあった。
10年以上働いてきて、これだけ。 冷たい水に顔をつけたときみたいな、静かなショックだった。
知らなかったんじゃない。「見たくなかった」だけだった
その夜、通帳の履歴をざっと追った。
- コンビニで毎日300〜400円
- サブスクが6つ、合計月8,000円近く
- 外食が月4〜5万円
- 息子の習い事、保険、駐車場代
ひとつひとつは「それくらいかな」という感覚だったものが、並べると全部で月の手取りをほぼ超えていた。
知識がなかったわけじゃない。 通帳を見れば残高はわかる。 明細を見れば何に使っているかわかる。 知識ゼロでも見ればわかることを、見ていなかった。
なぜ見なかったか。 見たら、「なんとかなってるはず」という思い込みが崩れるから。 だから確認しなかった。
FIREという言葉は知っていた。 複利の計算も、インデックス投資の仕組みも、なんとなく知っていた。
でも自分の家計の実数を、一度も直視したことがなかった。
地図を持たずに「目的地に行きたい」と言っているのと、同じだ。
「見ること」から始めたら、少しだけ変わった
翌朝から、家計簿をつけ始めた。
- 収入:月収(税引き後)
- 固定費:家賃・保険・サブスク・習い事
- 変動費:食費・外食・日用品
- 特別支出:急な出費・学校行事
書いてみると、固定費だけで手取りの55%を超えていた。
まず動いたのは、サブスクの見直し。 6つのうち3つを解約した。 何に使っていたか思い出せないものが、ちゃんと混じっていた。
次に保険を見直した。 死亡保障を下げて、月3,500円削れた。
副業の収益が月0円のまま、支出を月7,500円減らすことができた。
小さい。 でも、これが最初の「実際に動いた」という感覚だった。
2ヶ月、3ヶ月と通帳を見続けるうちに、少しずつ変わってきた。 残高が増えたわけじゃない。 副業収益もほぼゼロだ。
でも「今自分がどこにいるか」がわかるようになった。 それだけで、少し落ち着いて考えられるようになった。
息子に「お金で諦めた」と言わせたくない
去年の夏、息子が「水泳教室、行ってみたい」と言った。
1秒も考えずに「いいよ」と言えた。
「お金があるかな」じゃなくて、「行けるか行けないか、今はわかる」という状態になっていたからだと思う。
FIREなんて、まだ全然先の話だ。 副業収益もゼロに近い。 貯金も少ない。
でも、通帳から目を逸らすのはやめた。 それだけは、あの夜から変わった。
FIRE設計は、数字を「見る」ことからしか始まらない
FIREまでの道のりを計算したいなら、まず3つの数字が要る。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| ① 毎月の手取り収入 | 税引き後の実際の手取り |
| ② 毎月の実際の支出 | 固定費+変動費の合計 |
| ③ 今の総資産 | 貯金・投資・財形すべて合計 |
この3つが即答できない状態で、投資の利回りを計算しても、副業の目標額を決めても、砂の上に家を建てるようなものだ。
FIREに必要な資産は「年間支出×25倍」と言われる。
- 年間支出が300万円なら、必要資産は7,500万円
- 年間支出が200万円なら、必要資産は5,000万円
この差、2,500万円。 支出を減らすことが、稼ぐこととまったく同じ意味を持つ。
稼ぐより先にやることがある、というのはこういうことだ。
あなたは今、自分の家計の数字を即答できるか
今月の支出、いくらか。 固定費の合計、いくらか。 総資産、いくらか。
すぐに答えられなかったなら、俺と同じだ。
「見る」を始めた日から、なにかが変わった。 稼げるようになったわけじゃない。 でも、地に足がついた感覚が初めて来た。
今日やること、ひとつだけ提案するとしたら。
通帳を全部並べて、今の残高を紙に書く。
それだけでいい。 分析しなくていい。 解決しなくていい。 ただ、見る。
今の自分がどこにいるか、知ることから全部始まった。
※この記事はぼく個人の体験談・調査に基づく情報です。投資・保険・金融商品の判断は自己責任でお願いします。必要に応じてFP等の専門家にご相談ください。
まとめ:副業より先にやることがある
- お金を「見てこなかった」のは、知識がなかったからじゃない
- 確認すれば不安になるから、見なかっただけ
- 通帳を並べて数字を書き出すだけで、最初の一歩になる
- 支出を月7,500円減らすことが、副業で稼ぐことと同じ意味を持つ
- 「今どこにいるか」を知ることが、FIRE設計の本当のスタート
→ まず今夜、通帳を全部開いてみよう。