銀行口座の名義変更と贈与税|110万円と夫婦・親子間の線引き
「口座の名義を家族に変えたら、贈与税がかかるの?」
「夫から妻へ、親から子へ。お金を移したら、どこから申告が必要になるの?」
先に結論を書きます。1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず、申告も不要です。
ただし、名義を変えて対価のやり取りがないときは、「原則として贈与」として扱う、という国税庁の通達もあります。毎年同じ額を渡す場合にも、落とし穴があります。
この記事では、国税庁のページと通達を読んで、線引きを4つに整理しました。ぼくの体験談ではなく、国税庁の資料を読んで、書かれていない部分まで含めて整理したものです。
家族間でお金を動かす前に、この4つを1回見ておけば、「知らないうちに課税されていた」を避けやすくなります。
名義を変えて対価がないときは、原則として贈与になる
相続税法基本通達の9-9(財産の名義変更があった場合)には、こう書かれていました。
不動産、株式等の名義の変更があった場合に、対価のやり取りが行われていないとき。または、他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合。これらの行為は、原則として贈与として取り扱う。
つまり、お金を払わずに名義だけ移すと、贈与があったと見られるのが出発点です。
この通達の文面には「不動産、株式等」と書かれていて、銀行口座の預金は名指しされていませんでした。預金を家族の口座に移した場合の扱いは、この条文だけでは読み切れません。
そのうえで、国税庁のタックスアンサーが、贈与税の線引きを説明しています。
線引き1:1年間の合計が110万円以下なら、申告も不要
国税庁のNo.4402には、暦年課税の仕組みが書かれていました。
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の価額の合計から、基礎控除額110万円を引いた残りにかかります。合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。
ここで見落としやすいのが、数え方です。No.4402の暦年課税の説明は、贈与を受けた人が、その年に受けた財産の合計で書かれています。
渡す人ごとの金額ではなく、もらった人の1年間の合計で見る、という読み方になります。
線引き2:110万円を超えたら、翌年2月1日〜3月15日に申告と納税
合計が110万円を超える場合は、贈与を受けた人が、財産を取得した年の翌年2月1日から3月15日までの間に、申告と納税をします。
税額は、No.4408の速算表で計算できます。まず合計から110万円を引いて、残りに税率をかけます。
国税庁の計算例では、贈与財産が500万円の場合は次のとおりでした。
| 贈与の種類 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|
| 一般贈与財産(夫婦間など) | 390万円 × 20% − 25万円 | 53万円 |
| 特例贈与財産(18歳以上の子が直系尊属から) | 390万円 × 15% − 10万円 | 48.5万円 |
No.4408では、夫婦間の贈与は「一般」として扱われていました。親から子への贈与は、子が18歳以上なら「特例」の速算表を使います。
同じ500万円でも、渡す相手との関係で税額が変わる、ということです。
線引き3:「毎年100万円ずつ」と約束すると、約束した年に課税される
110万円以内なら毎年少しずつ渡せばいい、と考えたくなります。国税庁のQ&Aには、この落とし穴が書かれていました。
毎年贈与契約を結び、各年の合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要です。
ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与することが、最初から約束されている場合は別です。約束をした年に、定期金に関する権利の贈与を受けたものとして、贈与税がかかります。
要するに、「毎年110万円以内」だけを見ていると、「最初に10年分を約束した」時点で課税される場合がある、ということです。
「こつこつ渡せば大丈夫」という考え方は、約束の仕方によっては通用しないようです。
線引き4:生活費・教育費は、必要な都度使う分なら非課税
No.4405には、贈与税がかからない財産が11種類並んでいました。そのひとつが、家族間の生活費と教育費です。
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から、生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものは、贈与税がかかりません。
ただし、条件があります。
- 生活費や教育費として、必要な都度、直接これらに充てるものに限られる
- 生活費や教育費の名目でもらっても、預金したり、株式や不動産の購入資金に充てたりした場合は、贈与税がかかる
生活費とは、治療費、養育費その他子育てに関する費用も含みます。教育費は、学費、教材費、文具費などです。
渡すときの名目ではなく、もらったお金を何に使ったかで判断されるわけです。
教育費の贈与については、教育費に贈与税はかかる?子供への仕送りの注意点にも、国税庁の基準を整理しています。
贈与のタイミング:いつ贈与があったことになるか
No.4402のQ&Aには、贈与による財産の取得の時期も書かれています。
- 口頭による贈与:贈与の履行があったとき
- 書面による贈与:贈与契約の効力が発生したとき
年末から年始にかけてお金を動かすときは、どちらの年の贈与になるかで、110万円の枠の使い方が変わりそうです。
年をまたぐ送金は避けて、どちらの年に入れるかを先に決めておくほうが、管理は楽だと思います。これは資料の文ではなく、ぼくの考えです。
この資料に書かれていなかったこと
正直に、読んで分からなかった点も書いておきます。
- 銀行口座そのものの名義変更の手続き:国税庁は税金の話で、銀行の口座を誰かの名義に変えられるのかは扱っていませんでした
- 親が子名義で貯金していた預金の扱い(名義預金):読んだ範囲では、実質的に誰のお金かを判定する基準は確認できませんでした
- 相続時精算課税の細かい条件:No.4402に制度の存在は書かれていましたが、選ぶ条件や手続きは追っていません
- 夫婦間の居住用不動産の贈与の特例:No.4405の関連コードに名前が出ていましたが、中身は読んでいません
特に、預金の名義まわりは、実際の動かし方で判断が変わりそうです。迷う場合は、この部分だけ、税務署か税理士に聞くのが確実だと思います。
家を財産分与したときの税金は、離婚の住宅名義変更と贈与税に、保険の契約者を変えたときの税金は、保険の契約者変更と贈与税に、それぞれ国税庁の資料をもとに整理しました。
よくある質問
夫から妻へ、110万円以内なら毎年渡しても問題ありませんか?
No.4402では、毎年贈与契約を結び、各年の合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要、と書かれています。ただし、毎年同額を渡すことが最初から約束されていると、約束した年に課税されることがあります。
親から子への贈与は、税率が変わりますか?
No.4408では、18歳以上の子や孫が、父母や祖父母などの直系尊属から受けた贈与には、特例の速算表を使うと書かれています。夫の父からの贈与などには使えない、とも書かれています。
申告しなくていい金額は、いくらまでですか?
1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税の申告は不要です。110万円を超えると、翌年2月1日から3月15日までの申告が必要になります。
出典(読んだページ)
- 国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
- 国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合(Q&A)
- 国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
- 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
- 国税庁 相続税法基本通達 第9条関係
まとめ:「いくら」「約束の仕方」「使い道」の3つを見る
- 名義を変えて対価がないときは、原則として贈与として扱う(相続税法基本通達9-9)
- 1年間にもらった合計が110万円以下なら、贈与税も申告も不要。超えたら翌年2月1日〜3月15日に申告と納税
- 「毎年同額を渡す」と最初に約束すると、約束した年にまとめて課税されることがある
- 生活費・教育費は、必要な都度使う分なら非課税。預金すると課税対象になる
ここに書いた内容は、国税庁の資料を読んだ範囲での整理です。税金の判定は、渡す財産の種類や関係、実際の使い道など、個々の事情で変わります。最終的な判断は、税務署や税理士などの専門家に確認してください。
次の1アクションは、「誰が、誰に、1年間でいくら渡すか」を1枚のメモに書き出して、110万円を超えていたら、そのメモを持って税務署の相談窓口に聞いてみることです。
超えていなくても、毎年同額を渡す約束をしていないかだけは、メモの上で確認してください。
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